今回、お話を聞いたのは丸山垂穂さん。是枝裕和監督の日仏共同制作『真実』の字幕・吹替を担当するなど、フランス語の映像翻訳を手がける一方で、手話通訳やバリアフリー字幕もこなし、“三足のわらじ”を履いて活躍されています。翻訳者になった経緯から現在までの映像翻訳者としてのキャリアはもちろん、手話通訳についても語っていただきました。
【プロフィール】
丸山垂穂(まるやま・たりほ)
大学卒業後、フランスの日本人学校職員を経てACクリエイトに入社。映像翻訳のノウハウを学び、フリーランスの映像翻訳者として独立。主な字幕作品に、『仕立て屋の恋』『ラスト3デイズ 〜すべて彼女のために〜』『愛、アムール』『パリよ、永遠に』『婚約者の友人』『スペシャルズ! 〜政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話〜』『私は確信する』『パリ13区』など。手話通訳者としても活動し、バリアフリー字幕も手がけている。共著に『パリの日々 言語哲学者の休暇、あるいは字幕翻訳者のプロローグ』(三修社)がある。
きっかけは石田泰子さんへの手紙
──字幕翻訳の仕事に興味を持ったのは?
両親が映画好きで子供の頃から映画館に連れて行ってもらっていたので、高校生くらいからはひとりで名画座に通っていました。15歳のときに父の仕事の都合でパリに1年間滞在したんですが、現地校に通ってフランス語を学び、そこでもパリの至る所で上映されている映画を観ていました。そんな環境にいたので、十代の頃から字幕翻訳という仕事に対する漠然とした憧れはありました。
ただ字幕翻訳者への道は狭き門だと思っていました。特にフランス語の場合は英語と違って、字幕翻訳の学校もありません。日本で大学を卒業した後も、興味はあったもののどうすればなれるのかも分からないままでした。そんなときにフランスのアルザスに新設される日本人学校で教職員を募集していたので、それに応募して2年間アルザスに住むことになり、教職員として働きながらあらためてフランス語を学びました。
──字幕翻訳の世界にはどのように入ったのですか?
アルザスから帰国後、やっぱり字幕の仕事がしたいと思っていたときに、雑誌で石田泰子さんの記事を見つけました。当時、石田さんはすでに第一線で活躍されていて、私も作品を観て憧れていました。そこで思いきって手紙を書き、出版社の方を通して石田さんに渡してもらったんです。まさかお返事がくるわけないと思っていましたが、後日、石田さんが私の自宅に電話をくださいました。一度会ってお話をということになり、新宿の喫茶店でお会いしました。その後、石田さんからACクリエイトをご紹介頂き、契約社員として働くことになりました。
──ACクリエイトは映像翻訳者の菊地浩司さんが設立した字幕・吹替の制作会社ですね。どんな仕事をしていたのですか?
ハコ切りやスポッティング、あとは当時まだ手書きだった字幕原稿をチェックしたり、字幕のカードを写植屋さんに持って行ったり、雑用全般です。そこでプロの翻訳者の原稿を目にして、分かりやすい日本語や語彙の選択などノウハウを学ぶことができました。
──実際に翻訳の仕事を始めたのは?
いずれ独立する方向で働かせてもらっていたので、ACクリエイトにいる間にビデオやBS、CS作品の翻訳を少しずつ担当させて頂きました。2年くらい経った頃、フランス映画祭用に翻訳したパトリス・ルコント監督の『仕立て屋の恋』(1992年日本公開)が劇場公開されることになり、結果的にこれが劇場デビュー作となりました。
カトリーヌ・ドヌーブの”Merde!”をどう訳す?
──これまでの担当作品で印象に残っているのは?
デビューしてから家族ものや子供が出てくる作品を担当することが多かったのですが、あるとき、フレッド・カヴァイエ監督のアクション映画三部作の翻訳依頼が来ました。担当の方が「いかにもアクション、というセリフにしたくないので、あえて女性の翻訳者にお願いしたい」とのことでお声がけくださいました。そういうご依頼だったので特に口調などは自然なものになるよう意識して翻訳をしました。
──女性言葉については最近よく話題になりますが、そのあたりのお考えはいかがでしょう?
基本的にはいわゆる女言葉・男言葉・子供の言葉はなるべく使わないようにしています。特にメインキャラクターに多用することは避けています。メインキャラはセリフも多いので、「~わね」とか「~よね」といった口調にすると作品全体がそういう印象になってしまうので。
子供の口調もなるべくフラットにするようにしています。小さな女の子のセリフって「~わよ」「~なの」という語尾が使われがちですが、実際の子供たちはそんな話し方はしないですよね。
ただ女性言葉をゼロにするのはやはり難しいと思っています。映像的に話者が誰か分かりづらい場合は、口調で性別を分からせる必要がありますし。脇役に少しキャラをつけたい場合なども、あえて使うことがあります。
──是枝裕和監督の『真実』(2019年)では字幕と吹替の両方をご担当されていましたね
あの作品はもともと監督が日本語で書いたオリジナル脚本がフランス語に訳され、フランス語で出来上がった作品にまた日本語の字幕をつけるという作業でした。監督からもなるべくオリジナルの脚本に近い形で訳してほしいというオーダーを頂いていたので、いつも以上に監督と脚本の意図を汲むことを意識しました。
あるシーンでカトリーヌ・ドヌーブが“Merde!”と言うセリフがあったんです。英語でいう“Shit!”ですね。日本語だと「クソ」と訳されることが多いですが、実際にはいろんな場面で言われる単語です。そこはドヌーブが自分自身に舌打ちするようなシーンだったので、私は「まったく」とか「もう」という訳語にしていました。すると監督から「ここはオリジナルの脚本で“クソ”としているので、それに合わせたいです」という修正が入り、泣く泣く「クソ」に戻した、なんていうこともありました。
『真実』を大変気に入った出版社アンドエトの編集者が、『真実 La Vérité シナリオ対訳』という本を出してくださったんです。ト書きも含めてすべてフランス語と日本語の対訳が載っています。その出版の際のトークショーに呼んで頂いたりもしたので、自分の中でもとても印象に残る作品となりました。『真実』はかなりの回数観たと思います。
──オリジナルが日本語でも、フランス語を通すといろいろ変わるので難しい作業ですね
そうですね、そもそもフランス語から日本語字幕にする段階で情報自体がかなり減ってしまうので、まったく同じにするのは難しいです。監督ご自身も「字幕にするとこんなに情報量が減ってしまうということを知らなかった」と驚いていらっしゃいました。そういう意味では吹替のほうが監督の意図を汲んだセリフづくりができたのかなと思います。
──これまでに一番苦労した作品は何でしょう?
『TOMORROW パーマネントライフを探して』(2015年)というセザール賞のベストドキュメンタリー賞を取った作品は、とにかく調べものが大変でした。食・自然エネルギー・経済・教育などテーマが多岐にわたっていて、とてもひとりで網羅できる情報量ではなかったんです。セリフに加えてインサート字幕も多く、トータル2500~3000枚くらいあったでしょうか。訳しても訳しても終わらない!という感じでしたね。ただ制作陣にたまたま理系に強い方がいたり、ご実家が農家の方がいて確認してくださったり、皆さんにご協力頂いて何とか乗り越えられました。
──調べものが大変そうです
調べて答えが見つかっても、本当にそれが正しいのか分からないですよね。現場でその用語を使っている人や専門家に聞くと、実際には少し違っていたりもします。19世紀のフランスで実際に起きた“ドレフュス事件”という冤罪を描いた作品『オフィサー・アンド・スパイ』(2019年)を担当したとき、関連書籍はすべて目を通したのですが、本によっても情報に食い違いがあるので、どれを基準にするかなども迷いました。
──監修が入る場合もありますね
これは人によって違うと思いますが、私は監修の方に入って頂くと安心なので、こちらから制作担当者にお願いすることもあります。もちろん予算等の関係もあるので必ず入れて頂けるわけではありませんが。逆に配給のほうから監修を提案されることもありますし、いろいろです。
40歳を過ぎてから再び大学へ
──いい訳が浮かばないときはどうしていますか?
仮訳を入れた状態でいったん放置して、ワインを飲んで食事します。全く別のことをしているときにふと浮かんだり、テレビや人との会話の中でいい言葉が見つかったりします。そのまま考えていても、浮かばないときは浮かばないので。
──「訳すのが難しい」と思うのはどんなセリフですか?
シンプルな言葉が一番難しいです。例えばフランス語の“salut”は頻繁に出てきますが、全部「やあ」「こんにちは」にすると単調になりますよね。英語の“hi”であればアウト(字幕なし)にしても問題ないですが、フランス語の場合は“salut”くらいの挨拶でも知らない人は知らないので、アウトにもしづらいんです。頻出する場合は初出だけ訳語をつけて、2回目以降はアウトにすることもあります。
──ご自身のスキルアップのために何かしていることはありますか?
40代のとき、大学のフランス語学科で学び直したことがあります。4年生大学の3年から編入して2年通いました。フランスの語学だけでなく、歴史、哲学、社会学、移民政策、政教分離(ライシテ)などを勉強したんですが、ものすごく楽しかったです。学生時代よりも「こういうことが知りたい」という部分がはっきりしているので、学ぶことが本当に楽しくて。20歳ほど年下の子たちに交ざって勉強しましたが、みんな優しかったです(笑)。
──どんな映画がお好きですか?
2歳のときに初めて観た『メリー・ポピンズ』(1964年)のサントラ盤は子守歌代わりに何度も聴いたので忘れられません。子供向けだと思っていましたが、大人になって観ると新たな発見が多いです。フェミニズムやウーマンリブの運動が出てきたり金融破綻が絡んできたり。深い話だなと思います。
それ以外は基本的にはハリウッドものよりヨーロッパ映画に好きなものが多いです。ハッピーエンドではないけど考えさせられる作品とかですね。レジスタンスや戦時下の市民を描いたものも好きで、世の中でどちらかというとマイノリティに属する人たちに焦点が当たった作品に惹かれます。
たぶん私自身、考え方がマイノリティ寄りなんだと思います。例えば一般的なことだと夫婦別姓、同性婚などは認めたほうがいいと思っていますし、子供の頃から自分がいいと思うことは世の中的には少数派なんだな、と思う機会が多かった気がします。学校でひとりだけ違う意見を言うのが難しい空気ってあると思うんですが、それをおかしいなと感じていたり。元々そういう傾向があって、海外生活でさらにその部分が明確になったのかもしれません。
あと私のイメージにないようで依頼は少ないのですが、実はコメディも大好きなんです。フランスのコメディ映画『奇人たちの晩餐会』(1998年)の吹替を担当したことがありますが、本当に楽しくて大笑いしながら訳していました。今後もっと担当できたらいいなと思います。
──あらためて、映像翻訳の魅力とは何でしょうか?
最初の視聴者として、誰よりも早くその映画が観られることです。そして毎回違う作品を翻訳するので新鮮で、どんな字幕にしようかと考えるだけで、わくわくします。
──映像翻訳を勉強中の方にメッセージをお願いします
映像翻訳には、どんな経験でも役に立ちます。回り道をして違う仕事をしていたとしても、いつかそれが絶対に役に立つ。なので何でも好奇心を持って面白がり、いろいろな人に会って話を聞くことが大事だと思います。
手話通訳者としての丸山垂穂
──丸山さんは手話通訳者(*)としても活動されていますが、そもそも手話を始めたきっかけは何だったのでしょう?
* 手話通訳:耳が聞こえない人と聞こえる人の間で、手話を使い、相互のコミュニケーションを仲介すること
息子の保育園の同級生のお母さんの中に聞こえない人がいたんです。とても魅力的な人で、彼女と仲良くなりたいと思ったことがきっかけです。なので特に手話通訳への志があったとか人助けしようとかではなく、単に身近にそういう人がいたからですね。
──どこで習い始めたんですか?
住んでいた地域の手話講習会に通いました。どこの自治体でも実は手話って無料で学べるんです。そこで1年間のカリキュラムを修了したら知り合いができて、飲み会に参加したり他の講習会に行ったりしているうちにどんどん楽しくなってきました。飲みの場でもそこに聞こえない人がいれば手話で会話をします。
そういうコミュニティに参加していたので、だんだん周りからも「手話通訳を目指したら?」と言われるようになり、手話通訳の資格試験を受け始めました。今、国内の試験は3つありますが、まず全国統一試験を2009年に、次は厚生労働省が認定している手話通訳士試験を2016年に、あと東京都が委託している「手話通訳等派遣センター」に登録するための試験を2020年に受けて資格を取りました。
──日本での手話の需要はどのくらいあるのでしょうか?
増えていると思います。2006年に国連で手話が言語として認められて2014年に日本も批准したので、そこから国としても広めないといけないという流れができました。東日本大震災で官房長官の会見などに手話通訳がつきましたが、あれは実際に聴覚障害者団体から要望があったそうです。今では気象庁やコロナ関係の知事会見などにもつくようになりましたよね。
ただ大震災の直前におきたニュージーランドの地震のとき、ニュージーランドの会見はテレビ画面の半分に首相、半分に手話通訳者が映りました。それだけ海外では手話の重要性が浸透していると考えると、日本はまだまだ追いついていない感はあります。
──日本の法律ではそのあたりはどれくらいカバーされているのでしょうか?
障害者総合支援法に基づいて、聴覚障害者は無償で手話通訳を依頼する権利があります。都道府県などの自治体で手話言語条例も次々と成立していますが、手話言語法の制定はまだです。実情として、通訳の要望を出しても必ずつけてもらえるとは限りません。1人の聴覚障害者のために、となると費用負担の問題などもあるので。
あと、企業などで情報漏洩などを理由に会議に手話通訳をつけない、という話も聞きます。ですが実際には手話通訳には守秘義務があり、通訳としてついた会議の場で見聞きした内容は外部に漏らしてはいけないことになっているので、その心配はありません。そういうこともまだまだ知られていないのかもしれませんね。
──今年のアカデミー賞は、家族のなかでひとりだけ健聴者の少女が主役の『コーダ あいのうた』がオスカーを獲りましたね
はい、あれはフランス映画『エール!』(2014年)のリメイクなのですが、『コーダ』では実際に耳が聞こえない役者が聞こえない役を演じていたという点も評価されたと思います。知名度などの点から健聴者が聞こえない役を演じることも多いですが、日本にもろうの役者は大勢いるし、ろう者劇団もあるので、聞こえない人の役は聞こえない役者がやる、というのがもっと定着したらいいなと思います。
──丸山さんはバリアフリー字幕(*)を手がけたこともあるそうですが
* バリアフリー字幕:主に聴覚障害者向けに、話している人の名前やセリフだけでなく、映像で流れる音楽や効果音、環境音などの意味のある音情報を文字で表した字幕
『ヴァンサンへの手紙』(2015年)という作品で翻訳字幕とバリアフリー字幕を両方担当しました。通常の字幕があれば耳が聞こえない人にも分かるのでは?と思われがちですが、洋画でも日本語をしゃべっているシーンがあるとそこに字幕はつきません。
役所広司さんや菊地凛子さんが出演されている『バベル』(2006年)でそういうシーンがあって、日本語の部分に字幕がないと問題になりました。それ以降、バリアフリー版を作る会社は増えたようですが、洋画にもバリアフリー字幕は必要だと思います。
──聴覚障害者の方にとって、字幕で見るのと手話通訳で見るのは、どう違うのでしょうか?
感じ方は全然違います。生まれたときから聞こえない人の中には、文字が並んでいても情報をキャッチできない人もいます。手話は視覚言語なので、言語の捉え方がそもそも違うんです。手話にも「てにをは」はありますが、音声言語のそれとはまたちょっと違うので、文字で出されてもとっさに理解できないこともあります。そういう人には手話通訳が分かりやすいと思います。
逆に後天的に聴力を失った人や難聴者には、文字情報ですべて出してくれるバリアフリー字幕はとてもありがたいです。字幕と手話、どちらで見るか選択できるのがベストなので、両方あるのが一番いいですね。
字幕翻訳と手話通訳の共通点
──手話通訳をしていて字幕翻訳の仕事に何か影響はあったりしますか?
手話通訳の知識は、耳の聞こえない人が出てくる作品ではもちろん役に立ちます。フランス語の台本があるので、手話が分からなくても訳すことはできますが、実際に聞こえない人が見たとき、手話と字幕のタイミングがずれてることもあるそうです。手話のシーンの字幕を耳の聞こえない人に見てもらって確認する機会が少ないので、そういうことも起こりますよね。
また、手話通訳と字幕翻訳は、話の内容を分かりやすく伝える、というところが似ています。手話通訳は同時通訳が多いですが、逐次もあります。聞こえない人の表現も人によって様々なので、話の内容を整理しながら訳していきます。そこが字幕の「言葉の意味をつかんで分かりやすく伝える」という部分と共通していると思います。
手話や聴覚障害に関する知識があってよかったと思うことも多いです。例えば「ろうあ者」という言葉ですが、実際の聴覚障害者が自分のことを「ろうあ者」とは言いません。差別というわけではないのですが、「ろうあ」という言葉は耳が聞こえず喋ることができない人、という意味になります。実際には聞こえないけど喋れないわけではないので、自分を「ろう者」とは言っても「ろうあ者」とは言わないんです。
一口に耳が聞こえないといってもいろいろな人がいます。生まれたときから耳が聞こえない人は自分を障害者とは思っていないですし、単にひとつのアイデンティティとして捉えています。そういう背景知識があるかないかで、訳語の選び方も変わってくると思います。
最近は、映画×手話の仕事が少しずつ増えてきました。バリアフリー字幕のモニター会の通訳を務めることがあります。制作会社がバリアフリー字幕つきの邦画の上映を行い、そこにろう者や難聴者を招いて鑑賞後に、字幕についての意見交換をするというものです。その場で聞こえない人たちと制作側の手話通訳をしました。また、劇場で監督や出演者のアフタートークの通訳をすることもあります。こういう映画と手話両方に関わる仕事はうれしいですね。
手話通訳は聞こえる人と聞こえない人をつなぎます。手話は聞こえない人を助けるためのものではありません。手話通訳というとなぜか人助けとか福祉の観点で捉えられがちですが、実際には聞こえる人と聞こえない人を対等につなぐものです。
字幕翻訳は映画の制作陣と観客をつなぐので、手話通訳と共通点がありますね。そうやって人と人をつなぐ仕事が私は好きみたいです。
丸山さんが字幕翻訳を担当した近日公開予定の作品
『あのこと』(配給:GAGA)
12月2日(金)よりBunkamuraル・シネマ他、全国順次ロードショー
アンヌの毎日は輝いていた。貧しい労働者階級に生まれたが、飛びぬけた知性と努力で大学に進学し、未来を約束する学位にも手が届こうとしていた。ところが、大切な試験を前に妊娠が発覚し、狼狽する。中絶は重罪。アンヌはあらゆる解決策に挑むのだが──。原作は、今年のノーベル文学賞を受賞したアニー・エルノーの『事件』。<観る>のではなく、彼女を<体感する>かつてない鮮烈な映画体験。
【取材・文】
梶尾佳子(かじお・けいこ)
フリーランスの字幕ディレクター兼ライター。日本語版制作会社の字幕部にて6年勤務した後、独立してフリーランスに。翻訳を含め、言葉を扱う仕事に関する様々な情報や考えを発信していけたらと思っています。
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