●テープの種類(SR、ベーカム、デジベ等)の日本が開発したテープは、世界で使われてきました。映像業界での撮影、編集には日本のビデオテープが使われてきました。そのため、その時代に制作された映像作品(アニメ、ドラマなど)の完パケは、各種、日本のプロ用テープです。現在でも昔の作品を配信やディスクなどで楽しみます。つまり昔の作品をどこかの段階でテープからデジタイズしてデータ化することが必要なのです。デジタイズする際には、各種テープについての基本知識が重要となってきます。
年代順:
🔹1980年以前は、インチ等と呼ばれる大きなテープが主流でした。そのためカメラマンは撮影の時には大きなカメラと、テープが入っている大きな収録機とが必要でした。一人では移動しながらの撮影などは大変に難しい状況でした。
🔹1980年代に入ると、ベータカム(通称:ベーカム)というテープが開発されました。これは小型テープでカメラの横に入ってしまいます。そのため、カメラマンは一人でカメラをかついで撮影できるようになったのです。タレントが走り回れば、カメラマンも追いかけて撮影ができるようになりました。テレビ放送用に撮影するプロが使うカメラもテープも、これで統一されていきました。
🔹1980年代中盤になると、品質が向上し長時間収録できるベータカムSP(ベーカムSP)というのが映像業界を独占しました。
🔹1990年代中盤になると、デジタルで収録できるデジタルベータカム(デジベ)が広まります。世界の映像業界は、撮影する際にはデジベを使うのが常識というほど、デジベは広まりました。
*1990年代後半には、ハイビジョン撮影が可能なプロ用、アマチュア用の多くのカメラ、テープが広まり始めました。しかし、プロの映像業界ではデジベが独占していました。
この20世紀の終わりの段階で、保管用の完パケテープとしては、ベーカムSP、デジベ、インチ、D2などが主流でした。1990年後半、テレビ局が放送用として使うテープは大きめのテープで、D2と呼ばれるテープが主流でした。当時はそのD2テープが最終版として保管されたのです(但し、各テレビ局は倉庫縮小のため、21世紀に入ると保管してあったテープは次々とデジタイズを進めて、テープではなく、できるだけデータで保管するようになりました。)NHKはD5というテープを完パケとしていました。
🔹21世紀に入ると、現在のハイビジョンが広まり始めます。テレビも4x3の画面サイズから、現在と同じ16x9へと変わっていきます。
HDCAM(通称:エイチディーカム)というHDが収録できるテープが業界で広まります。
🔹2010年になるとHDCAM-SR(通称:エスアール)というフルハイビジョンのテープが世界でかなり広まります。世界的に有名なハリウッド映画が世界中でDVDになる際には、ハリウッドからこのSRテープが送り出されたのです。HDサイズで映像が入っているだけではなく音声も12チャンネル入れられたため、5.1chサラウンド音声や、吹替用に必要となるME音声などもこのテープに入れることが出来たのです。
このSRテープはその後、ずっと映画などの保管用、海外への映画販売用として、世界中で使われてきました。
🔹2020年くらいになると、放送用の最終完パケとして、テープよりも場所を取らない、XDCAMというディスクをマスターとして取り入れるテレビ局も増えました。
🔹そして今、ご存知の通り、テープやディスクなどのメディアは少なくなってきました。基本的に映像はデータで保管され、データが世界中でやりとりされるようになったのです。
🔹今後、テープが完全になくなるのかはわかりません。テープには利点もあります。テープであればテープを渡した場所にしかその映像は存在しませんから責任の所在が明確です。その映像がデジタイズされない限り多くの人には広まらないのです。とはいえ、技術の進歩とともに映像データにも様々なセキュリテイ上のロックをかけることも出来るようになっています。そして何といっても形があるものは、年月がすぎると劣化します。テープは時間がたてばテープ自体が古くなるのです。データは時間がたったからといって色が変わってしまうこともありませんし、ノイズがのって映像や音声が汚くなってしまうこともないのです。