●被写界深度は、英語では(Depth of filed)デプス・オブ・フィールドと言い、その環境下でピントがあう範囲を言います。明るい場所で撮影するとピントは簡単に合わせることができます。しかし暗い場所では、ピントがあう幅はかなり狭くなります。つまり明るければ被写界深度は深く(広い)、暗いと被写界深度は浅く(狭い)なるということになります。
どのくらいピントがあう幅があるかは、カメラの絞りを見れば分かります。「F2.8」「F4」「F16」などとレンズのところに数字が書いてあります。この数字が小さくなるほど、被写界深度は狭くなります。つまりピントがあう幅は狭くなります。レンズの絞りを「F22」で撮影すれば、かなり近くから遠くまでピントが合ってくれます。逆に「F1.4」で顔のアップを撮影したりすると、後ろの背景はボケボケになります。被写体が少し動いただけでピントはボケてしまいます。
「F1.4」のように数が少ない状態とは絞りが開いた状態です。それを「開放」と言うこともあります。「開放で撮ろう」と言ったら、そのレンズで可能な限りFの数字が少ない方にして、絞りをあけて撮影するということになります。通常のレンズですと、開放はF1.4位になります。プロのカメラマンは後ろをわざとボカしたい時に、絞りをあけてF1.4などにして撮影します。
逆に、映画で主人公が動き回る時には、被写界深度が浅いと、俳優が少し動いただけでピントがボケてしまいます。そのため、絞ってF22など、ピントが合いやすい状態で撮影しまです。映画のアクションシーンで、主人公が駆け回るシーンでは、絞りをF22などに絞って、主人公にも背景にもピントがあっている状態、つまり、被写界深度が深い状態で撮影します。
しかし、絞りを絞るということは、少ししか光がレンズから入ってこない状況です。映像が暗くてはアクションシーンは台無しです。そのため、昔のハリウッド映画では、昼間、外で撮影しているのに大きなライトの照明を追加で使ったりしています。つまり、可能な限り明るくすることで、絞りを絞って、被写界深度を深くして、主人公が動き回ってもピントがボケないようにしていたのです。
さて、逆に明るい所で撮影する時には、本来、絞りを絞らないと、光が入りすぎて映像は真っ白になってしまいます。しかし昼間、明るい所で撮影していても、絞りをあけて、わざとピントがあう幅を狭くして撮影したい場合もあります。顔だけにピントを合わせて、背景をボカしたい場合などです。その時に活躍するのがシャッタースピードです。光が入ってくる時間を短くすれば良いわけです。早いシャッタースピード(1/500秒)などにして、一瞬しか光を入れなければ、絞りをあけても、映像は真っ白にはなりません。
歴史的に高性能カメラを開発してきた日本の技術力には素晴らしいものがあります。昭和の時代に既に1/1000秒のシャッタースピードを実現していたのです。そして高速シャッタースピードよりも開発が難しかったとされる、光を沢山通すレンズも日本は開発してきました。明治時代には、写真を撮るために人は長い時間動かずに座っていたわけです。光を取り込めるカメラやレンズがなかったためです。日本のカメラメーカーは湖の近くの空気のきれいな場所に工場をつくり、精密なレンズを製造、開発していました。そして望遠レンズなのに開放でF1.4までいけるレンズなど、光を沢山通して、且つ、性能も良いレンズを開発してきたのです。