[ご注意]
・この記事は自動文字起こしを元に作成しているため、一部に誤りや話者の特定ミスが含まれる可能性があります。
・本動画シリーズは2023年6月~12月にかけて公開されたものです。ソフトウェアの仕様や業界の状況に関する情報が現在とは異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
【プロの仕事術】字幕翻訳は素材確認から!SSTでの動画ファイルチェック術を徹底解説
プロの字幕翻訳者にとって、翻訳スキルと同じくらい重要なのが、制作会社から受け取った素材を正確に扱う技術です。特に、作業の土台となる動画ファイルの確認は、字幕翻訳のワークフローにおける最初の重要なステップ。この確認を怠ると、後々の工程でタイムコードのズレなど、手戻りの原因になりかねません。
このシリーズ「字幕翻訳 受注から納品まで with SST」の第2回では、制作会社、翻訳者、字幕ディレクターという3つの異なる立場のプロが集まり、実際に仕事の依頼が来た後の動画ファイル確認の具体的な手順を、業界標準ソフト「SST」を使いながら徹底解説します。
タイムコードやフレームレートといった専門用語の確認方法から、動画ファイルが開けない、再生がおかしいといった際のトラブルシューティングまで、現場で役立つ実践的な知識が満載です。この記事を読めば、初心者の方が戸惑いがちな「素材確認」のポイントが明確になり、プロとしての確実な一歩を踏み出すことができるでしょう。
目次
今回のテーマ:プロ3者が解説する「依頼後の素材確認」
今回は実際に字幕翻訳のお仕事を制作会社から翻訳者さんに依頼して、作業するまでの一連の流れを順を追ってご紹介できればと思います。実際に翻訳者さんには画面共有をしてもらい、SSTの操作について解説していただきます。それと同時に、フリーの字幕ディレクターさん、そして制作会社に勤務している私も途中で質問をしたり、意見、体験談などをお話しできればと思います。
ということで、今回の翻訳の依頼を受けていただく翻訳者さんをご紹介したいと思います。
はい、よろしくお願いします。吉野さんは元字幕制作者で、制作会社の勤務を経て現在はフリーの翻訳者として活躍されています。そしてもう一方、フリーの字幕ディレクターさんをご紹介したいと思います。
字幕ディレクターの梶尾です。本日もどうぞよろしくお願いいたします。
よろしくお願いします。梶尾さんも元字幕制作者で、制作会社の勤務を経て現在はフリーの字幕ディレクターとして活躍されています。梶尾さんはvShareRのメンバーとしてもこれまでいろいろなノウハウを教えていただいていますが、改めて字幕ディレクターというお仕事の内容を簡単にご説明いただけますか?
字幕ディレクターというのは簡単に言うと、翻訳者さんが仕上げてくださった翻訳をダブルチェックしながら最終形に仕上げていく仕事です。翻訳された字幕に誤訳がないか、意味が分かりづらいところがないかなどを客観的に見て修正していきます。必要があれば翻訳者さんとやりとりをして、相談しながら字幕を修正して完成形にしていきます。
はい、ありがとうございます。三者三様ですが、我々立場の異なる3人が画面共有しながら今回進めていきたいと思います。
依頼から受注まで、リアルな仕事の流れ
翻訳を依頼した作品は、今回は短編映画の『GAME』という作品になります。この作品はスポーツを背景にした人間ドラマになるんですけれども、早速ですが吉野さん、普段どのように作業をされているか、アドバイスも含めて解説していただけますでしょうか。
はい。まず翻訳をご依頼いただいた時は、メールでいただくことが多いのですが、段階としては翻訳のスケジュールと翻訳料金がいくらになるのか、それで「このスケジュールで大丈夫ですか?」というお話を最初にいただくことが多いです。
そうですね。制作としてもお伺いするのは、作品名はあまり言わないかもしれないですけど、ジャンルであったりとか、大体どれくらいの本編尺ですよということと、素材を渡しますとか納期とかを話したりというところで、まず「ご都合いかがですか?」という感じで聞くと思うんですけど。
はい。お断りする時でも「無理です」だけじゃなくて、「このスケジュールだとちょっと厳しいんですけど、あと1週間いただけたら何とかなります」という場合は、そういうこともちゃんとお伝えするようにしています。それで、もしかしたら(納期を)ずらしていただける可能性があることもあるので。
お受けできますということになったら、制作会社の方から具体的なタイトルであったり、素材の準備ができたら送りますというところで、素材を受領したところからですね。
素材として受け取るものは、主にまず映像ファイルですね。映像ファイルとスクリプトファイル、この2つのことがほとんどです。いただいた動画ファイルが使えなかったり、SST上でうまく動かなかったりすることも結構あることなので、いただいたらまず、スケジュール的に始めるのがまだ先だとしても、もらったらすぐに動画とスクリプトが使えるかどうかの確認をするようにしています。
最初の関門!SSTを使った動画ファイルの確認手順
私の自己流なんですけれども、この確認の仕方は皆さん色々あると思うんですが、私の場合はSSTで動くかなというのが一番大事だと思うので、SSTを開いて、この左上の「新規ファイル」作成をします。
すると「映像ファイルを開きますか?」と出てくるので、とりあえずこれで開いちゃいます。今回はこちらのファイルを開きます。
(波形データ作成中……)
この波形データ作成中にプチ情報なんですが、この波形データというのは動画ファイルを開くたびに生成されるんですね。これがパソコンの中にどんどんどんどん溜まっていくので、知らないでいると容量を食われていってパソコンが重くなってくるので、定期的に消すことをお勧めします。
SSTで動画を開くと、スポッティング作業を補助するための音声波形データ(.datファイル)が自動で生成されます。このデータはPCの容量を圧迫する原因となるため、プロジェクトが完了したら定期的に削除するのがおすすめです。
【波形データの保存場所】
ドキュメント > SST G1 Net > Wave > Normal
これでデータが開いて、再生はできるかな…はい、ちゃんと音声も聞こえますね。再生もできます。これを見て最初に気づくのは、タイムコードが入ってないんですね、映像の中に。大体この辺とかこの辺とかに、こういうタイムコードが焼き込まれているはずなんですけど、SSTではこれとそのタイムコードをぴったり合わせることで、映像と字幕がずれていないかを確認するんですね。なので、タイムコードが入ってないと映像とSSTのデータを合わせることができません。
ただ、たまにSSTで作業するものでタイムコードが入ってないものもあるので、まず「タイムコードが入ってないですけど大丈夫ですか?」とクライアントさんに確認して、「それでもやってください」と言われた場合は、「じゃあ映像の頭を0(00:00:00:00)に合わせた形で進めますけれども、それでいいんですか?」と確認するようにしてます。
最重要チェック項目!タイムコードとフレームレート
あと、タイムコードが入ってないと映像のフレームレートも確認ができないので、フレームレートは何に合わせればいいのかも合わせてクライアントさんに確認するようにしています。
基本的にはワーク映像(作業用の動画)ってタイムコードが入ったものが支給されるので、タイムコードがないと映像がコマ飛びしてないかとか、そういったところもタイムがずれたかどうかも分からないので、一番はタイムコード入りのものをいただくのが一番かなと思うんですけど、どうしてもない時もあったりするので、そういう時はさっき吉野さんがおっしゃったみたいな、頭に基点を置いて作業をする形になるかなと思います。
はい。で、先ほどの映像データにはタイムコードが入っていなかったので、新しくタイムコードの入ったデータをもらい直して、今SSTで開いてみました。開くとまず「現フレームのタイムコードを入力してください」とあるんですけど、個人的な、すごい個人的なやり方ですけど、これは無視します(笑)。
とりあえず開いて、飛ばして、タイムコード合ってるかな、というのを何ヶ所かで確認します。これで最後まで見て合ってれば、ほぼ間違いないですね。これで映像のタイムコードとSSTのタイムコードが合ってるので、この状態で作業して大丈夫です。
例えばタイムコードがずれてましたってなったら、どうしますか?
では、これをノンドロップの環境で開いてみましょうか。SSTの設定がノンドロップだった場合で読み込んでみます。デフォルトでは前にやった作業の状態になってたりすることがあるので、どれになっててもおかしくはないんですね。必ず24P(24フレーム)になっているわけではなくて。今回は30Fr NDFになってたという設定で、この状態で映像ファイルを開いてみます。
(タイムコードがずれて表示される)
これだと、ずれてますよね。だいぶずれてます。これだとダメなので、こんなにバンバンずれている時は、映像とSSTの方のフレームレートの設定が合ってないということが分かります。
フレームレートとは、動画が1秒間に何枚の静止画(フレーム)で構成されているかを示す値です。24p(23.976fps)、30fr NDF(30fpsノンドロップフレーム)、30fr DF(29.97fpsドロップフレーム)などが代表的です。映像素材とSSTのフレームレート設定が異なると、時間と共にタイムコードがずれてしまい、字幕の表示タイミングが合わなくなります。
さっきの設定を開いて、基本設定のところでどっちかな、と。最近は24Pが多いのでこれを試すと思うんですけど、まず1回ドロップフレームかなと思ってドロップにしてみます。…やっぱりずれてます。もしかしたら頭が合ってないからずれてるのかな、と思ってこのタイムを同じに合わせてみますが…(再生すると再びずれる)…頭を合わせたのにずれてるということは、SSTのフレームレートと映像のフレームレートが合ってないということです。
また戻ります。今度は基本設定で「じゃあ24Pかな」ということでこっちに合わせて、再度タイムを合わせます。…(開始点を合わせ、再生する)…合ってますね。合ってます。
これは受け取ったことありますよ、全然タイムが合ってないやつ。「違う!」と思って。力技で何とかなる時もあるんですけど、基本的には全修正になるので、制作会社さんがやってくれることも、戻ってくることもあると思うので、ぜひここは必ずチェックしていただけると。
SSTを使わずに動画ファイルの仕様を確認する方法
そもそも支給されたタイミングで、SSTを使わずに確認する方法とかはありますでしょうか。
はい。映像ファイルを右クリックすると、一番下に「プロパティ」が出てくるので、ここをクリックします。するとタブがいくつかあるんですけど、この中の「詳細」をクリックすると、「フレーム率」、これがフレームレートなんですけど、これがこの映像のフレームレートになります。「23.98フレーム/秒」なので、SSTの設定としては24Pに設定するのが正しいというのが分かります。
ただドロップかノンドロップかはここでは分からないんですね。
そうですね。ドロップ・ノンドロップの場合だと29.97とか、もしくは30で出てるかもしれないんですけど、29.97というところは分かるんですが、それがドロップかノンドロップかというのは分からないので、それに関してはタイムコードで見てもらうしかないですね。
表示がおかしい?映像のアスペクト比と画面調整
ちなみにどういった「変なデータ」があったりしますか?SSTはMPEG1、WMV、MP4に対応していますが、そのファイルであっても何か変なものって。
MP4とかでも、なぜか再生できないとか、コマ送り…普通に流して再生する分には見れるのに、コマ送りしようとすると突然おかしくなったり、止まったり、落ちてしまったりすることがあります。
映像ファイルとの互換性の問題だと思うんですけど、たまに自分のところで落ちても、クライアントさんの方では何も問題がなかったりすることもあるので、一応伝えると、結構制作会社さんの方でエンコードをし直してくれて、新しいものをくれたりすることが多いです。MP1とかにしてくれると問題なく動くことが多いので。少し画質は落ちるんですけど、作業には使えるようにしてくださったりします。
最初のSSTの設定によっては、今きれいに画面に映像がぴっちりハマって見えてるんですけれども、そうじゃない時もあるんですね。これは何の設定がおかしいかというと、「設定」の中の「画面調整」です。これ、今「16:9」になっていて、下が「1920 x 1080 (16:9 Full HD)」という正しい設定になっています。なんですが、ここが違っていると、例えば「4:3 LetterBox」になっていたとしたら、こういう風に縦に映像が伸びてしまうんですね。
結構、制作会社に入った時に言われたのは、丸っぽいものを見ると分かりやすい、と。
そうですね、丸に見えなくはないですけど、人の顔がちょっと面長に見えたりとか。映像ファイルを見ただけだとどの設定が正しいかというのは専門の人じゃないと分からないと思うので、その時はこの画面調整を開いて色々試してみるのが一番いいと思います。
でも最近は、この下の「目的モニタ(出力対象)」の設定に関しては、この「1920 x 1080」でいいんじゃないかなと私は思っているんですが。
配信系とかだったら、このあたりは16:9のものを何かしら選んでおけば問題ないんじゃないかなと。フルHDが一番シンプルかなとは思います。
まとめ:正確な素材確認が品質を支える
今回は、プロの翻訳現場で行われている「依頼後の素材確認」の中から、最も基本となる動画ファイルの確認方法に焦点を当てて解説しました。
仕事の受注と素材の受領: 制作会社からスケジュールや料金と共に仕事の打診があり、合意すると映像とスクリプトファイルが送られてきます。
SSTでの初期確認: まずはSSTで動画ファイルを開き、正常に再生できるか、音声は問題ないかを確認します。この際、PCの容量を圧迫する音声波形データが自動生成されることを覚えておきましょう。
タイムコードとフレームレートの重要性: 最も重要なのが、映像とSSTのタイムコードとフレームレートが一致しているかの確認です。これがずれていると、字幕のタイミングが全てずれてしまうため、必ず作業開始前にSSTの「基本設定」で正しく合わせる必要があります。
トラブルシューティング: 支給された動画がSSTでうまく再生できない場合は、制作会社に連絡すれば再エンコードしたデータを支給してもらえることがほとんどです。焦らずに報告・相談することが大切です。
一見地味な作業ですが、この最初の素材確認を正確に行うことが、後の作業をスムーズに進め、最終的な字幕の品質を担保する上で非常に重要です。
丁寧な素材確認こそ、プロの仕事の第一歩です。さて、動画ファイルの確認が終わったら、次はいよいよ翻訳の土台となる「スクリプト(台本)」のチェックです。次回は、支給されるスクリプトの種類や、作業前に必ず確認すべきポイントを詳しく解説します。