vShareR CLUBの編集スタッフが、2025年3月に刊行された翻訳関連の書籍のなかから「読みたい!」と思った本をピックアップして紹介します。

出版中止!
一度「死んだ」から書けた翻訳家残酷物語
宮崎伸治 著
小学館
価格:1,430円(税込)
ISBN:978-4093891882
全フリーランスに捧ぐ出版トラブル全記録
すべてのフリーランサーへ捧ぐ。
慰謝料回収のために探偵を雇い、
裁判で勝つ為に40代で法学部入学!?
ベストセラー『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記』著者が
数々の出版トラブルに見舞われた後
最後に笑うためにやったこと全部
(出版社ホームページより)

ひとつ以上の言語
バルバラ・カッサン 著、西山雄二・山根佑斗 訳
読書人
価格:1,320円(税込)
ISBN:978-4924671911
仏・バイヤール出版社による、シリーズ「小さな講演会 Les petites conférences」は、2004年から刊行されている哲学・思想系の入門的シリーズとなる。本書(バルバラ・カッサン『ひとつ以上の言語』)は、「小さな講演会」シリーズの一冊として、2019年に刊行された。「なぜ自からの言語(母語)とは別の言語を学ばなければならないのか」が、大きなテーマとなる。
著者カッサンは言う。「ふたつの言語を話すことで、とても深刻な錯覚に陥ることを避けることができる」。ひとつの言語しかない、自分たちが話す言語しかないと想像できなければ、世界は「凄まじい分裂」に陥る。言語は人間そのものでもある。そしてすべてのひとは「母語」を持ち、それが広がっていくことによって、他の言語と交わり、世界が広がっていく。
複数の言語を知ること――それは、複数の手段を持ち合わせていることでもある。複数の言語とは複数の世界であり、世界へと開かれる複数の方法でもあるのだ。
たとえば、日本語の「こんにちは」という挨拶の言葉は、ギリシア語では「喜んで、喜びを感じて、楽しんで(khaire)」となる。あるいはフランス語では「よい一日でありますように(bon-jour)」、さらにローマ人は語では「元気でいて/健康でいて(vale)」、ヘブライ語では「平和が君とともにありますように(shalom,sam)」となる。挨拶の言葉一つとっても、言語が違えば、そこに込められる意味が異なってくる。それは、その社会の一端を確かに著すものでもある。
「二つの言語を話し、理解することで、自らの言語が唯一のありうる言語ではないこと、それぞれの言語が、どのような意味の激突や融合を生み出すのかを理解することができる」と、バルバラ・カッサンは言う。「世界」は激しく混合し、雑多で、結合と分離からなっている。だからこそ、言語の多様性を知ることによって、人は人を理解し、うちとけることもできる。
また言語は、たんにコミュニケーションの手段(道具)ではないと、カッサンは強調する。「言語はひとつの文化であり、さまざまな文、異なるリズムからなる世界でもある」。文化こそが言語を決定し、言葉の多様性を広げていくベースとなる。「言語は世界の作者であり、世界の作品であり、世界を発明すること、世界を切り分ける」ができる。
以上のような言語(母語)と世界(人間)をめぐる問題について、子ども向けに、やさしく具体的に、バルバラ・カッサンは語りかける。わが国においては、なかなか「母語」というものを意識する機会はない。そのため、外部(他者)への想像力が貧しくなりがちである。分断が極まりつつある社会で、「ことば」から社会を見る目を、本書を通して養うことができるのではないか。
(Amazon紹介文より)

ごぞんじ
開高健と翻訳者との往復書簡177通
滝田誠一郎 著
小学館
価格:1,980円(税込)
ISBN:978-4093891950
開高健が翻訳者に明かしていた著作への思い
『輝ける闇』や『オーパ!』などで知られる開高健は、『夏の闇』などを翻訳したセシリア瀬川氏と、翻訳にまつわる質問と回答などで頻繁に手紙を交わしていた。
内容は語句の説明や日米の言い回しの違いなどが中心だったが、次第にプライベートな部分にまで及び、開高は著作にかける思いや思うように書けない悩み、趣味のこと、病気のことなどまでありのままに瀬川氏に打ち明けていた。
これまで知られていなかった開高文学の真実と開高健の素顔を、180通の往復書簡を通じて明らかにする。
(出版社ホームページより)